2018年11月30日、ジャパンタイムズ社取締役編集委員会は、第二次世界大戦時やそれ以前に日本企業で強制的に労働に従事させられた労働者やいわゆる「慰安婦」について、どのように表現するかを定めた「編集者の注釈」を発表しました。
従前の用語規定では、慰安婦について「第二次世界大戦時やそれ以前に日本軍に性行為を強制された女性」と表現していました。しかし、新たな規定においては、「意思に反した女性を含む、日本軍に性行為を提供するため戦時の売春宿で働いていた女性」と変更しました。
さらに、同注釈では「強制労働」という従前の用語を「戦時労働者」に変更しました。取締役編集委員会は、上記2点の編成方針変更の正当化の根拠として、それぞれの立場で「さまざま」な見解がとられている状況にあるためとしています。
東ゼン労組ならびに同ジャパンタイムズ一般労働組合(JTGWU)は、上記の編成方針変更に対し、強い抗議の意を表します。事前に予告することもなく、知識を有するライターやエディターの意見を一切聴くこともなく、まさに一方的になされた変更でした。これは、歴史学の主流派の立場を軽視するものと言わざるを得ません。
結果的に、ジャパンタイムズ紙は、慰安婦および強制労働に従事させられた人々の苦難を軽く扱い、公平公正に真実を報道することより、政治的利害関係を優先し、さらに、商業的利益のために日本政府に服してしまったと公に受け止められる事態となりました。
これらの一方的変更は、ジャパンタイムズ紙の評判に害を与えることとなったため、JTGWUの組合員らの士気、労働時間、高まるストレス等、種々の労働条件に直接的に影響を及ぼしています。新たな編成方針が、新聞そのものや、そこで勤務する者の高潔さにおける評判にも影響を及ぼすものとなったため、ライターやエディターは、情報提供者と連絡をとったり、コラムの執筆者らに記事を依頼したりする際に多くの困難に直面しています。
団体交渉において、東ゼン労組ならびにJTGWUは、会社に対して、編成方針変更の撤回を求めるとともに、将来にわたっても、今回のような抜本的な方針変更の場合には、組合と事前協議を行うことを要求しました。
組合側は、次のように提案しました。
1)ジャパンタイムズ社は、「編集者の注釈」に関して謝罪し、慰安婦や強制労働についての編成規定を従前のものに戻すこと
2)今後、編成方針変更にかかわる2つの編成委員会にJTGWUが参加できるようにすること
3)今後、今回のような変更を実施する場合には、最低1ヵ月前に組合に通知するとともに協議の機会を与えること。組合側が充分協議が尽くされていないと考えた場合、その変更の実施を留保すること。
現時点においては、会社側は組合の上記の提案について、一つも応じていません。
会社で新聞制作に携わる者の専門職としての評判、労働条件、報道の自由を脅かされている現況において、重要かつ特筆すべきジャーナリズムを標榜するジャパンタイムズの高潔さ、そして存続そのもののために、上記の措置は不可欠であると考えます。
以上