フランス語教室を運営する「アンスティチュ・フランセ日本」(旧・日仏学院)の東京校で、非常勤講師としてはたらくフランス人男性3人が7月2日、不当な給料減額があったとして、元の条件で報酬を受ける雇用契約上の地位にあることの確認を求めて、東京地裁に提訴した。
●ホームページには「フランス政府公式機関」と書かれている
訴状などによると、原告3人はそれぞれ、6年から19年にわたって、時間給の非常勤講師(契約期間・6カ月または1年間)として、アンスティチュ・フランセ日本(旧・東京日仏学院)のフランス語の授業を担当してきた。
2018年2月、アンスティチュ・フランセ日本から、同年4月以降の時給を引き下げたうえで、期間の定めのない労働契約(無期転換)を締結すると申し入れがあった。原告らは、「引き下げに応じられない」と留保したうえで、期間の定めのない雇用契約の締結には応じるとこたえた。
原告らは、同年3月末までに契約期間が満了することになっていたが、それまでと変わりなく勤務をつづけている。こうした状況のとき、「それまでと同一条件でさらに雇用をしたものと推定する」(民法629条)というルールがあるため、今回の提訴に踏み切った。3人ともに今年10月以降、有期雇用から無期転換できる権利が発生することになっているという。
ホームページによると、アンスティチュ・フランセ日本は2012年9月、フランス大使館文化部と東京日仏学院、横浜日仏学院、関西日仏学館、九州日仏学館が統合して誕生した団体だ。東京、横浜、関西、九州の4支部(5都市)を拠点に「フランス政府公式機関」として、フランス語講座のほか、文化・思想・学問を発信している。
●非常勤講師たちの生活が不安定になっている
原告のフランス人男性3人、グザビエさん(45歳・19年勤務)、ピエールさん(29歳・6年勤務)、ジルさん(43歳・15年勤務)はこの日の提訴後、東京・霞が関の厚労省記者クラブで会見を開いた。
グザビエさんは「学校のためにできるだけスケジュールを空けないといけません。スケジュールを空けば空けるほど、(授業を)担当する機会が増えますが、学校以外の働く機会が減っていきます。一方で、毎月どれくらい収入が入るかわからない状況がつづいています」「大変ストレスが多い仕事だと思います」と述べた。
ピエールさんは2017年冬まで週12時間担当していた授業が、現在ゼロ時間になっているという。「メインの収入源でしたが、生活するためになくなった分を補うために別の仕事しています。家賃を払う分しかカバーできていません」と話した。ジルさんも「子どもを学校に通わせるのも難しくなりそうだ」と苦しい状況を訴えた。
原告代理人をつとめる指宿昭一弁護士は「本当の問題点は、労働契約法の『無期転換ルール』(5年ルール)の趣旨に反していることだ。これまで何度も反復契約しているので、いきなり雇い止めしたり、賃金を下げることはできない。日本の労働法を無視した暴挙といってもよい。フランス政府にぜひ考えてもらいたい」と話していた。